理解しておきたい管理費と修繕積立金
中古マンション購入を考えるとき、皆さんどのようなことを検討されるでしょうか。
ざっくりとリストアップしてみました。
- 立地や周辺の環境
- 物件価格
- 分譲会社、施工会社、構造、築年数
- 建物外観、規模、共用施設や設備、グレード感
- 専有部分の間取りや広さ
- 管理費や修繕積立金月額
- 駐車場、駐輪場の有無や月額
- ペット、ピアノなどの規約
- リフォームや設備交換の要否および費用
- 管理会社、体制、管理状況、修繕履歴、財務状況
- 管理組合やコミュニティの状況
購入する際にはそれぞれを十分理解し、しっかりと検討する必要があるでしょう。
さて今回はマンション購入で最初に理解しておきたい「管理費」と「修繕積立金」について解説したいと思います。
本題に入る前に「専有部分」と「共用部分」について区別できるようにしておきましょう。
分譲マンションは個人所有となる専有部分と、共同所有となる共用部分で構成されています。
両者の区別は区分所有法で定義されていますがざっくり分けると、専有部分は住戸部分の躯体より内側の範囲と付属の設備を指し、共用部分は専有部分以外の建物や設備等を指します。
専有部分は基本的に区分所有者自身が維持管理し、共用部分は区分所有者で構成されるマンション管理組合が、組合員から徴収する「管理費」と「修繕積立金」で維持管理します。
中古マンションを購入してからリフォームやリノベーションできるのは専有部分です。
専有部分である階段や外廊下は当然ですが勝手にいじることはできません。
少しわかりにくいのは、バルコニーや専用庭、玄関扉、窓サッシなどは共用部分だという点でしょうか。これらは区分所有者に対して共用部分の専用使用権が与えられているという位置づけとなります。バルコニーや専用庭に構造物を設置することはできません。玄関扉や窓サッシを勝手に交換することも基本的にはできません。
ここまでご理解いただけた上で、本題の「管理費」と「修繕積立金」について考えてみましょう。共に共用部分の維持管理を目的として居住者から毎月徴収するお金です。
「管理費」はマンションの日常的な管理運営支出を賄うために徴収される費用です。
具体的には日々の清掃やエレベーターなどの設備メンテナンス、光熱費、共用施設の維持管理などに使われています。
エレベーター数、敷地の植栽の規模、ラウンジなどの施設充実度、共用部の清掃頻度などによってかかる総額は違います。そして総額を各戸で分担するわけですから戸数によっても負担額が変わります。
このように、マンション全体でかかる管理費は安ければ良いというわけではないのですね。
ご自身が共用部分に求める仕様をよく考え、コスト負担に納得感があるか考えてみることはとても大切なことではないでしょうか。
そして管理費の使途、収支を確認してマンションが健全に管理されているか把握しておくことも大変重要なことです。
引き続き「修繕積立金」について理解しましょう。
マンションを長期的に維持するには適時適切に修繕工事、改修工事を実施する必要があります。「修繕積立金」はこれらの計画的な工事のために管理費とは別会計で管理されます。 (他に不測の故障の改修や災害、火災等の復旧なども使途目的含まれています。)
計画的な工事を実施するためには、将来見込まれる工事の内容、時期、概算を明確にし、実施のために修繕積立金の額を設定することが不可欠です。
この計画のことを長期修繕計画といいます。
長期修繕計画に関して、工事項目、周期、修繕積立金額の目安は国土交通省からガイドラインが示されており、HP等でどなたでも読むことができます。
そして、マンション分譲事業者も、マンション管理組合も、マンション管理組合から委託されて長期修繕計画を立案する管理会社やコンサルティング業者も、このガイドラインを指針にして長期修繕計画を立案しているはずです。
ご興味のある方は国土交通省の資料をどうぞ。
長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント(全文)(PDF)
簡単に内容に触れてみましょう。
ガイドラインには、長期修繕計画に必要な修繕工事項目とそれぞれの修繕周期が整理されています。
主なものとして、例えば外壁塗装やタイルの補修は12年周期、屋上防水は12年目に補修し24年目に撤去新設、給排水管は15年目に更生し30年目に取換、手すりや建具は36年目に取換といった具合です。
外壁のメンテナンスを実施するには足場を組まなければできません。
足場を組むには手間もお金もかかりますから、足場を組む際にまとめて修繕工事を行うべく、大規模修繕工事はだいたい12年周期で計画されるのが一般的なのですね。
そしてガイドラインには、推奨される計画期間が示されています。
新築マンションで30年以上、既存マンションで25年以上とされています。その理由は、新築マンションにおいては30年目に想定される配管の更新などが計画に入るように、中古マンションにおいては周期12年程度となる大規模修繕が2回含まれるように設定されているのです。
また5年程度ごとに調査・診断を実施し計画見直しを行う必要があると述べられています。
計画においては、各修繕工事項目の仕様、単価、数量を見積もり、推定修繕工事費を算定するわけですが、マンションの維持管理状況、資材や工事費の価格、消費税など刻々と変化します。状況を把握し、計画を絶えず更新することは大切なことですよね。
その上での修繕積立金。ガイドラインには修繕積立金の徴収額の設定についても考え方が掲載されています。
基本的には25年とか、30年といった計画期間の修繕工事に必要な累計金額を期間の月数で割り、各戸に負担額を配分する方法が推奨されています。これを均等積立方式と呼びます。
ところがマンションの分譲段階では、分譲業者が長期修繕計画と修繕積立金の額が売る側の論理で低めに設定されているケースが多々あります。段階的に値上げすることが前提になっているのですね。これを段階増額積立方式と呼びます。
最初の額のままだと分譲時の設定で12年目の大規模修繕費用は賄えても、24年目には足りなくなってしまうこともあるでしょう。
マンション購入の際は、その時点において適切な長期修繕計画があるかをチェックし、修繕積立金月額の値上げの可能性について把握しておくのが良いでしょう。
国土交通省からは、「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」が公表されています。15階未満の場合、新築時から均等積立方式で30年を見据えた場合の平均積立月額は、およそ200円/㎡程度とされています。70㎡で月額14,000円前後ということですね。新築時からこの程度の積立がなされているかどうかチェックするのも1つの方法でしょう。
また、20階を超えるタワマンや機械式駐車場を持つ場合などは修繕費用が更にかかりますので、修繕積立金を確認する際は注意が必要でしょう。
興味のある方は国土交通省の資料をご覧ください。
マンションの修繕積立金に関するガイドライン(平成23年4月策定)(PDF)
ところで建具や手すりなどの修繕周期は36年なので、新築時に策定される30年の期間には含まれていません。築40年越えを見据える時期になればそのための見直しも必要になるでしょう。中古マンションを購入する際はこの辺りも確認項目ですね。
最近よくTVや雑誌などで、修繕積立金が足りない高経年マンションの問題がクローズアップされ、中古マンションや団地にネガティブなイメージを持つ方は多いと思いますが、一括りにするのは間違いです。
そもそも住居のメンテナンスにコストがかかるのは当たり前であって、それを怠った場合に問題になるのです。マンションに限らず一戸建てでも、しっかりメンテナンスをかけている建物と全く管理が行き届いていない建物の差は歴然ですよね。
管理組合がしっかりしている中古マンションでは、こういった問題をしっかりと受け止めて対応されているものです。
ここ稲毛海岸には、既に築40年を超え、玄関サッシが一新された団地物件がありますが、このように適切にメンテナンスされている物件は何ら問題ありません。
一方で、確かに修繕積立金不足のマンションが多いのも事実です。
国土交通省から5年に一度示される実態調査結果が最近上がってきましたのでご覧ください。
平成30年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状(PDF)
玉石混交なのですね。
従って、マンションの選定においては、立地や専有部分の間取りだけでなく、共用部分の管理状況、長期修繕計画があるか、修繕積立金は適正か、購入前の確認はとても重要です。
それともう1点。
修繕積立金が足りなくて行き詰るような状況のマンションは論外ですが、月額アップが想定される物件を購入対象にする場合もあるでしょう。
月々の住居費用は、ローン支払い額、管理費、修繕積立金、駐車場などが必要です。
それに固定資産税などもかかりますよね。
修繕積立金の値上げで生活費の収支が破綻しないように気を付けましょう。
今回のブログはここまでとし、今後折をみてその他の項目も書いてみたいと思います。
弊社はお客様の立場に寄り添って丁寧に進めます。
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